2008年07月31日
FEZ 単発読み物(BLネタ)
暑くて頭痛が酷いなぁ……
というわけで(?)、脳が腐ったままなためか、また、BLネタな方の短編を勢いだけで書き上げてしまいました。
他にいろいろやるべきことがあるはずなのに……
某隠れ家SNSに上げたやつを、ちょっとだけ修正しております。
でもあれです、消されないかどうか微妙な線の描写というか……
話の内容はギャグっぽいというかバカっぽいんですけどね!
まさに山なし落ちなし意味なしというか。
書いてる人がおバカだから内容もというかキャラがおバカになっちゃうんだろうなきっと……!
描写がちょっとアレなレベルなので、文字の色変えをしておきます。
続きの部分の、タイトル以降を選択反転でお読みください。
♂同士のいちゃいちゃするのが苦手な人は回避でよろしくです!
あと一応15歳未満の人は見ないでね!
(18かどうかはスレスレ? ここの基準わかんないよ!)
ネタ(「嵐の夜」「洞窟=ネツ首都」というキーワード)を言い残して去ったフレ(氷皿♀ちゃん)的にはシリアスなのを望んでいたのかもしれませんが……マジすんません……変な展開で……
というわけで(?)、脳が腐ったままなためか、また、BLネタな方の短編を勢いだけで書き上げてしまいました。
他にいろいろやるべきことがあるはずなのに……
某隠れ家SNSに上げたやつを、ちょっとだけ修正しております。
でもあれです、消されないかどうか微妙な線の描写というか……
話の内容はギャグっぽいというかバカっぽいんですけどね!
まさに山なし落ちなし意味なしというか。
書いてる人がおバカだから内容もというかキャラがおバカになっちゃうんだろうなきっと……!
描写がちょっとアレなレベルなので、文字の色変えをしておきます。
続きの部分の、タイトル以降を選択反転でお読みください。
♂同士のいちゃいちゃするのが苦手な人は回避でよろしくです!
あと一応15歳未満の人は見ないでね!
(18かどうかはスレスレ? ここの基準わかんないよ!)
ネタ(「嵐の夜」「洞窟=ネツ首都」というキーワード)を言い残して去ったフレ(氷皿♀ちゃん)的にはシリアスなのを望んでいたのかもしれませんが……マジすんません……変な展開で……
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『嵐の夜に抱きしめて』
二人はまだ駆け出しの新兵だった。
ネツァワルの首都に出てきたのはつい最近で、部隊に所属し、兵舎――
とは言っても建築物ではなく洞窟内の一角なのだが――の部屋を割り当て
られたのも数週間前だった。
この洞窟ばかりのベインワットで、どこに何があるのかもまだ把握
しきれず、移動にも慣れていない状態で、魔物狩りから帰還した二人は
自分たちの部屋に戻る道を見失い、関係のない通路に出てしまったり、
目も眩むような崖になったテラスに出てしまったり、真っ暗な行き止まりに
突き当たってしまったりして、はっきり言って迷子になっていた。
「なぁ……これ戻れなかったらどうすりゃいいんだ?」
黒い鎖帷子に銀と赤、白の装甲が取り付けられた、いかにも新入りですと
言う姿の若い戦士が不安げに呟く。
その鎧は国のオフィシャルショップで少しずつ販売されるタイプのもので、
若者本人ではなく彼の兄達が購入し、使わなくなった装備をお下がりとして
弟に与えたものだった。セットに頭部装備がないため、胴色の環状のものを
別途購入して装備している。
適当に切っているだけの不ぞろいな黒髪に、少し切れ長の黒い瞳は
それなりに大人びて見えるのだが、末っ子だからというのも手伝ってか、
見た目の割りにまだ中身は幼いらしい。
「いざとなったら、クリスタルの力使って出ればいいとは思うんだけど」
あまりにも不安そうな声で言った親友に苦笑して、もう一人の青年が
優しく微笑んで言った。
こちらは淡い青と銀の、袖なし短パンの上下に申し訳程度の装甲が
ついた、やはり新入り向けの装備を身につけた短剣使いだった。
顎の辺りまで伸ばした赤い髪は額の真ん中でしっかり分けて整えられ、
毛先もきれいに切りそろえられている。
少し大きめの誠実そうな瞳は、甘い果実酒に似た透き通るような赤で、
見る者を酔わせる魅力があった。
顔立ちは黒髪の戦士よりも幼いが、雰囲気はずっと落ち着いている。
「あ、その手があったか」
言われてやっと気づいたというように、黒髪の戦士が目を丸くする。
不安や焦りで落ち着きをなくし、冷静に考えられなかったのだろう。
「アドニスは昔から慌てん坊だよな」
赤毛の青年はくすくすと笑いながら、親友の頭をくしゃりと撫でる。
「な、なんだよ。おまえだって今まで不安そうな顔してたくせに」
俺レセダのそういうとこ嫌いだ、と、アドニスと呼ばれた戦士は
口を尖らせてそっぽを向いた。
「おまえに合わせてただけだもん」
レセダと呼ばれた赤毛の青年は、真似るように口を尖らせて言った。
「それに、なるべく歩いて覚えないと、結局帰れないしね」
そうなのだ。
いくらクリスタルの力で首都の転送先に戻ろうと、そこからの道を
覚えない限り、結局部屋に帰ることもできないし、今後買い物などにも
困ってしまう。首都そのものの構造に慣れる必要があった。
「まあな……そういや昔から二人でよく探検ごっことかしたなぁ」
アドニスは再び歩き始めながら、少し遠くを見るような目をした。
二人は幼馴染で、首都から程近い町で生まれ育った。
そこも半分ほどが崖を利用した洞窟でできていて、町のあちこちに
不思議な空間があったものだった。
「その頃から道に迷うとすぐびくびくしてたよね〜」
レセダはその頃の親友を思い出して、またニヤりと笑う。
「う、うっさい! 遅くなると親父と兄貴たちに怒られてたんだよっ」
迷うことの不安よりも、遅く帰った際のお仕置きが怖かった、とでも
言いたいのだろう。
しかしそれは、余計に親友を面白がらせてしまった。
「怒られるのが怖かったの? 今は誰にも怒られないのに不安そうじゃん」
「う……」
アドニスは何も言えなくなって、黙って足を速めた。
顔を赤らめて黙ったまま歩き続ける黒髪の青年と、それをおかしそうに
見つめながらついて歩く赤毛の青年。
しばらくそのまま、上下にも左右にも続く洞窟内を彷徨っていたが。
「誰にも会わないってのも不安だよな」
「うん……人いないね」
からかっていたレセダも、今度こそはさすがに不安になったようだ。
一般の市民が入ってこない軍人向けの区画ではあるのだが、それでも、
兵士の一人にも会わない。
「この辺ってまだ掘ってる最中だったりするのかな?」
レセダが思いついたように言う。
最近、兵士の数が増えていることもあってか、居住区を増やす計画があると
聞いたことがあった。
「あー、それじゃ逆に歩いて戻ったほうがいいかな」
そう言いつつも、そのまま前進していると。
目の前に、外へ出られそうな補強された穴を見つけた。
もう夜なのか、穴の向こうは薄暗いが、「灯りのない洞窟」よりは明るい。
二人は試しにそこから出てみた。
そこには、岸壁に寄り添うようにして通路が続いていた。
日はほぼ落ちていて、雲の隙間から時折覗く月明かりと、窓や入り口から
漏れる洞窟内の灯りが頼りだったが、外側を伝って、別の区画へ行けそうだ。
昔二人で町を探検していたときのような、好奇心のようなものが、
二人の心を躍らせた。
「な、ちょっと行ってみねぇ?」
「俺も今そう思ってた」
それまで不安そうだったアドニスの方から誘ってきたことで、レセダも
乗り気になって強く頷く。
◇◇◇
その通路は一応完成しているのか、二人で並んで歩ける程度の幅もあり、
足場としてきちんと頑丈に作られていた。
しばらく行くと、少し先に洞窟内への入り口があり、通路自体もそこで
終わっているようだった。
「あそこから入れば人のいる区画かなぁ」
もう少しで……というところで、急に風が吹き始め、大粒の雨が降る。
雲行きは元々怪しかったのだが、「月が隠れて明かりが心もとないな」
程度にしか思っていなかった二人は慌てた。
「ちょっ……あそこまで走るぞ」
濡れるのを嫌ってか、アドニスは先に入り口へ向かって走り出す。
レセダも風雨から目を庇うようにして走った。
入り口の先は、結局まだ無人の区画が続いているようだった。
誰も、いない。
「うーん、素直にクリスタル使って出る?」
レセダが冷静にそんなことを口にする。
「……」
なぜか、アドニスは答えなかった。
「アドニス?」
「……もう少し歩いてみねぇ?」
そういって指した先は、まさに居住区を作っている最中だったようで、
小さな部屋などがいくつも見えた。
今は作業をする者たちもおらず無人ではあるが、作業期間に休憩や仮眠に
使っているのか、家具などが運び込まれた部屋もあった。
「暖炉も使えそうだし、服とか乾かしてこうぜ」
今入ってきた入り口を見ると、雨はただの通り雨ではないようで、
激しい風で吹き付けられ、さらに雷の音が近づいているのがわかった。
「これ、今ヘタに転移しようとすると、嵐ん中に出るかも」
クリスタルを利用した転移は、細かい場所を指定して移動することが
できない。いくつかの指定された地点に、なかば強引に連れて行かれる
ような仕組みなのだ。
「確かに、あの橋の上とか出るとやだなぁ」
レセダは以前、雨の中に転移してずぶ濡れになったことがあった。
今は雨どころでなく、酷い風雨だ。
雨の音で、小さな声は聞こえなくなりそうなほどだった。
洞窟内を照らす小さな明かりを頼りに、使えそうな部屋を探す。
あまり入り口に近いと雨が吹き込んでくるため、少し奥に進む。
「っくしゅっ!」
「大丈夫か? 早めに火焚きたいな」
くしゃみをしたレセダを見て、アドニスは少し慌てたように足を速める。
「いやぁ大丈夫だよ。あ、でもこの部屋とか使えそ」
くしゃみの拍子に向いた方角に、薪をくべた跡のある暖炉と、使えそうな
薪が置かれた部屋を見つけた。
二人は早速、誰に言うでもなしに「お借りします」と言って暖炉に
火を入れた。
洞窟内で暮らすための技術はかなり進んでいて、煙を外に出す仕組みも、
二人にはわからなかったがきちんと作られている。
アドニスが関心して暖炉を眺めているうちに、レセダはさっさと装備を
外し始め、服も脱ぎだしていた。
「あっ、ちょっ……」
「どした? 服乾かすんだろ、おまえも早く脱いだほうがいいよ」
なぜか急にうろたえて背中を向けたアドニスに、レセダは笑いかける。
上着をすべて脱ぎ、靴なども放ってほぼ半裸になると、レセダは部屋を
物色して軽い綿の掛け布団を見つけ出して羽織った。
「お、暖かい」
そのまま暖炉の前に座り込む。炎がレセダの赤い髪と瞳を照らす。
アドニスはなんとなく、その横顔を眺めていた。
「何してんだよ、脱がないとおまえが風邪引くぞ?」
呆けたまま動かないアドニスに、レセダは不思議そうな視線を向けた。
「あ……うん」
視線が合うとまた、何か慌てたようにそれを逸らして、アドニスも
鎧を外し始めた。
が、鎧の下に着けている服を脱ぐ前に手が止まる。
「どしたの?」
他に見る物もないのでそちらに視線を向けていたレセダがそう訊ねると、
アドニスは顔を赤らめた。
「な、なんで見てんだよ。見んなよ」
「ちっこい頃からよく一緒に着替えてるじゃん。なに今更照れてんの?」
レセダは面白がって、羽織っていた布団を放ってアドニスの背に飛びついた。
「なっ……!?」
「脱げないなら手伝おっか?」
そう言って、ふざけ半分に服を脱がそうとレセダの手が肌に触れると、
アドニスはまるで雷撃を食らったときのように一瞬震え、硬直した。
「……アドニス?」
自分の鼓動と比べてはるかに速く大きく打ち鳴らされている心臓に気づき、
後ろから抱きしめているような格好のまま、レセダも止まってしまった。
「「ごめん」」
どちらからともなく、ほぼ同時にそう謝って体を離す。
「その、なんだ……何か、あったの?」
よくわからないが心配になったレセダは、どう声をかければいいか
迷いつつ、そう訊ねてみた。
「……俺、その、」
真っ赤になって俯いたまま、アドニスは言葉を濁す。
「俺、前からおまえのこと、が」
それだけで何を言おうとしているのか、レセダにもわかったが、
どう答えればよいものかわからず、また言葉を遮るのも悪い気がして、
黙って聞いていた。
「その、ずっとそういう意味で、……好き、だったんだ」
やっとのことで声を絞りだし、アドニスはちらりとレセダの顔を見る。
しかし恥ずかしいのか、後ろめたいのか、すぐに俯いてしまった。
「……いつから?」
ただただ驚いて、レセダは自分でも何を聞いているのかわからなかった。
そんな素振りは今までなかった、いや気づかなかっただけかもしれないが、
少なくともそんな雰囲気を感じたことは、今の今までなかったのだ。
「たぶん、兵舎で同じ部屋になってから」
それ以前から好きではあった、とアドニスは言う。
「俺、その。今こんなことまでぶっちゃけるのアレだけど……」
一度、決心するかのように瞳を閉じて深呼吸し、アドニスは続けた。
「その……兄貴たちに、そういう意味でかわいがられてたから、なんというか
抵抗がないっていうか、その、ええと」
好意のある相手であれば、性別やら何やら関係なく、そういうことをするのは
普通だと子どもの頃は思っていた、と途切れ途切れに言葉にする。
レセダは驚きのあまり、身じろぎすらできずにそれを聞いていた。
まさかあの家庭でそんなことが行われていたとは。
母親を早くに亡くして、男所帯でむさ苦しい印象がある家だった。
確かに末っ子のアドニスはとても可愛がられていたのを覚えている。
でも、まさかそういう意味でまで、愛されていたとは。
「それが普通じゃないって、思ったのはいつ?」
普通のことだと思ったままなら、今こんなに苦しそうに告白することも
ないだろうし、それ以前に、もっと前に行動を起こしていたのではないか。
そう思ってレセダはなんとなく疑問を口にしてしまった。
「はっきりとは覚えてないけど……兄貴が“他の人には絶対言うな”って
言ってたのと、本とか読んでても、なんか違う感じがして」
一般的に世の中に出回っている恋愛小説などは、大抵が男女のものだ。
それに、そう簡単に肌を触れ合わせるようなことにはならない。
いろいろな紆余曲折があって、困難を乗り越えたりして、結ばれる。
もちろんそうでない、いやらしさが売りの大人向けの本もあるが。
それでも、兄弟や、そもそも同性でというものはあまりない。
「だから、ごめん……やっぱり俺、変なんだよな」
先ほど脱がせようとしてレセダが触れてしまった、脇腹のあたりを押さえ、
アドニスは消え入るような声で呟いた。
風雨の音でかき消されそうな声だった。
「いや、驚きはしたけど、変では……ないと思う」
そういう恋愛を描いた本などもある。ただ、自分がその対象にされたと
いうことに驚きは隠せない。それに、告白されたからには、何か答えを
返さなければいけない。正直、それはどうすればいいのかわからなかった。
「レセダ、俺っ」
変ではないと言われて耐え切れなくなったのか、アドニスは親友に
抱きついた。
「えっ、ちょっと、待っ……」
いきなりぶつかられ、そのままよろめいて何かに足が躓く。
低めの寝台の縁だった。運良くなのか、悪くなのか、そのままベッドに
押し倒されるような形になってしまった。
床に倒れるよりはマシだが、この状況はその後の展開を促してしまっている。
「待って、落ち着いて、そんないきなりこんなこと」
普通の恋人だってしない。
やっとのことで親友の体を押し返しながら、レセダはそう言った。
「でも俺……おまえが、そういう意味で欲しい、我慢できない」
黒い瞳は泣きそうに潤んでいて、切羽詰ったような声をしている。
「おまえ、兄さんたちにされるのって、嫌じゃなかったのか?」
同じ男に何かされる、と考えただけで少し怖くなって、レセダは訊ねた。
アドニスは、そのとき怖くなかったのかと。
「よくわかってない頃からだったし、かわいがってくれてるとしか……」
自分にとってはむしろ嬉しかったことが、レセダを怖がらせているとわかり、
アドニスは押さえつける手を緩めた。
「……」
「俺、……俺は平気だし、挿れられるほうでもいいから」
「……え?」
黙ってしまったレセダを見つめたまま、真剣な顔で、アドニスはいきなり
直球ですごいことを言い出した。
その言葉の意味を理解して、今度はレセダが顔を赤らめる。
今まであまり気にもしていなかったのだが、アドニスの肌はレセダの
それより少し白く、滑らかな感じがする。
切れ長の黒い瞳は、潤んでいるせいか扇情的にさえ見える。
「どっちでもいいんだ、俺、とにかくおまえが欲しい」
必死に訴えてくる親友の、告白された過去を……実の兄に抱かれていた
という姿を想像して、思わず体が熱くなる。
かわいがりたくなる気持ちが、わかってしまう気がした。
「いや、でも、その、どうすればいいのかわかんないし」
自分の抱いてしまった劣情を振り切ろうとして首を振り、レセダは
慌てて起き上がろうとする。
しかしその勢いを利用して、アドニスはレセダの唇を奪った。
「……っ!」
「……」
「……ぅ、んっ」
逃れようとする自分の苦しげな息遣いと、逃すまいとするアドニスの
吸い付くような音だけがレセダの耳を刺激する。
外で荒れ狂っているはずの風雨の音はどこか遠くで鳴っているようにしか
思えなかった。
「おまえの望むほうで……俺がリードするから」
アドニスは唇を離し、耳元でそう囁く。
「どっちなら、いい?」
口づけの余韻と、肌を這う指に、脳が痺れていくようで、レセダは焦る。
何か答えなければと思うものの、正直どちらもどうすればいいのかわからない。
「されるのは怖いけど、その、するのってどうすれば……」
できれば、されるのはなんとなく避けたかった。
「女ともしたことないのか?」
「してたらおまえに言わないわけないじゃん」
ほとんど隠し事などしたことがなかった。少なくともレセダの側は。
「そっか……じゃあ俺が初めてなんだな」
アドニスが嬉しそうにその黒い瞳を細める。
「俺、されるほうは慣れてるから大丈夫」
そう言って、レセダの手を取ると、指を舐め始めた。
くすぐったいような、恥ずかしいような感覚に、思わず目を閉じる。
かなりの量の唾液を絡められたと思いきや、その手を体の下のほうへ
持っていかれ、何かに触れたところで恐る恐る瞼を上げた。
目の前にはアドニスの顔があった。
指が何か狭いところへと導かれて入り込んでいく感覚とともに、その
アドニスの顔が少し苦痛に歪む。
自分に跨るようにして乗っているアドニスの、下着も下げたその足の間に、
レセダの手はあった。
「こ、これどうすれば……」
自分の指が、締め付けられるような熱い場所に入り込んでいく。
レセダはどうすればいいのかわからず、少し指を動かしてしまうと、
びくりとアドニスの体が震えた。
「ごめっ」
「だ、大丈夫だから……も少し、奥の……多分ちょっと固いとこ……」
慌てるレセダに、眉を顰めながらもアドニスは微笑んで、その指を
もっと奥へと押し込もうとする。
指先が、他とは少し違う感触の部分に触れる。
「その辺……あと、すぐには入らないから、解すみたいに、動かして、くれ」
それだけ言うと、添えていた手を離し、レセダの胸や首筋に指を這わせる。
レセダは言われたあたりを中心に、そっと撫でるように指を動かしてみた。
「ぁ……っ、は、もっと、強くても、平気……」
アドニスの吐息混じりの声が、レセダの耳をくすぐる。
言われずとも緊張して、指に力がこもる。
「ぅ……あ、あぁ、レセダぁっ……」
息が上がり、色めき始めたアドニスの声に、レセダは体の芯が燃えるよう
な感覚を覚えた。動かす指が激しさを増してしまう。
「アドニス……どうしよう、俺……なんか……」
今自分の指が包まれているその場所に、これから自身が飲み込まれるのかと
うっかり想像して身を固くする。
「俺に、欲情、してくれてんだ……」
アドニスは指の動きに身もだえしながらも、笑みを浮かべてレセダに口づけ、
張り詰めたその部分に手を添えた。
「指、抜けよ……もういける」
「俺は、どうすれば?」
本能のまま突っ走ればいいなら、アドニスを押し倒してその後の行為に
及ぶことはできる、という確信はあった。
が、それで大丈夫なのかどうか、レセダには自信がなかった。
男女の絡みの本なら読んだことがあるのだが。
「俺が動くから、おまえはそのままでいいよ」
アドニスはそう言うと、添えていた手をその先端に移し、少し零れていた
滑りを周囲に広げる。
そのまま、レセダに跨るようにして腰を下げていき、先端の滑りに任せて
体内へと導きいれた。
「ぅあ……っ、アドニ、ス、っ」
きつく締め付けられる初めての感覚に、レセダは思わず呻く。
一人で処理することは普通にあったが、そんなものとは比べ物にならない
強烈なめまいのようなものに襲われた。
「まだ……動いてないぜ……?」
自分で感じているとわかって、アドニスは意地悪く囁いた。
無理に逆の立場を押し通さなくてよかった、と心のどこかで思っていた。
「もっと俺で感じて……」
困惑したような顔の親友を見つめたまま、アドニスは腰を揺らし始めた。
「あっ、ちょ……待って……やば、い」
「別に、イっちゃっても、い、ぜ……ぁあ……レセ、ダ、ぁ」
もう達しそうなら、と、アドニスは自身の快楽を求め、刺激が欲しい
その箇所に導くように、深さと角度を調整して擦りつける。
喘ぎ始めたアドニスの声と表情に余計に煽られて、レセダの体の熱が
腰のあたりに集中していく。
いつもふざけあっていただけの友人に、こんなにも欲情してしまう自分に
レセダは自分で驚き、恥ずかしくて仕方なかった。
「くそっ……おまえ、なんでそんな、色っぽいんだよ……っ」
卑怯だ、と言って、レセダは自身も突き上げるように腰を浮かせてしまう。
「知るか、馬鹿っ……きゅ、に、動くなっ……ぁ」
「も、止めらんないからな……!」
今までの関係ではいられない、恐らく自分から求めるようになってしまう、
レセダはそんな予感がしていた。
「止める、ひつよ、ねぇし……」
望むところだ、といった挑戦的な顔でアドニスはレセダを見下ろした。
惚れた弱みはアドニスにあるはずなのに、そして「している」のはレセダの
側のはずなのに、どう見てもアドニスの方が立場が上だった。
「今度は、俺が、自力で、ヤってやるからなっ」
もう限界だという顔で息を切らしながら、レセダは強がって見せた。
「いつでもどーぞ……レセダ、好きだぜ……!」
「俺もだよ……なんか悔しいけど……っ」
そのまま無言になってしがみつき合い、レセダはアドニスの体内に、
アドニスはレセダの腹部に、熱い想いを解き放った。
◇◇◇
二人の間の嵐が落ち着いたところで、外の音が戻ってきた。
「まだ雨凄そうだな」
ベッドに並んで寝転んだまま、アドニスが呟いた。
「このまま朝までここで寝ちゃおうか……」
レセダが大きなあくびをする。
「なにしたかバレないように、いろいろ片付けてから寝ないと」
「なんだ、人のこと襲っておいて周囲にはバレたくないの?」
面倒そうに起き上がったアドニスを引き止めるように、レセダが腕を掴む。
「襲ったって、ヤったのはそっちだぞ」
「どっちが挿れたかは問題じゃない、襲ったのはそっちだ」
喧嘩のような口調ではあったが、どちらも顔が笑っている。
「おまえそういう直接的な表現やめろよ」
「する前におまえが自分でも言ってたじゃないか」
どちらからともなく、ぷっ、と吹き出して笑い出す。
「でもこれ、ほんと朝作業しに人が来たら、驚くどころの話じゃないぞ」
アドニスは再び片付け始めながら言った。
「そうだね……」
「まあ、公認のカップルとかいいかもしれないけどな」
「無理、それ絶対無理!!!!」
先ほどは片付けを邪魔したレセダの方が、今度は真剣になって片付けだした。
「一緒に寝てるだけでもかなり怪しまれそうな気がするんだけど、どうする?」
結局適当に脱ぎ捨ててしまった服などを暖炉前に並べて乾かしながら、
アドニスが訊ねる。
「……一緒には寝たい……」
ぼそり、と小さく呟いたそのレセダの声は、風雨の音にかき消されて
アドニスには届かなかった。
「ん?」
「いや、俺ソファでいいよ」
「他の部屋にもベッドはあるぜ?」
どうせ別々に寝るならちゃんとベッドで寝ろよ、とアドニスは提案するが、
「部屋くらい一緒にいたいんだよ」
レセダは顔を赤らめてそう言った。
「あれ、なんか立場逆転? あれ?」
アドニスは嬉しいような恥ずかしいような気分で思わず声が上ずった。
「ばーか。喜びすぎだよ」
レセダは吐き捨てるようにそう言うと、掛け布団を一枚持ってさっさと
ソファに横になってしまった。
そんな仕草を見て。
「……やっぱり俺、おまえのこと」
大好きだ――!
無駄に大声でアドニスは叫んだ。
工事中ということで道は入り組んではいたが、同じ居住区の増設。
実はすぐ近くに、兵士たちの住む区画があった。
外が嵐だとはいえ、洞窟内に響いたその声は、一部の兵士たちの
耳に届き、安眠を妨害してしまうのだった。
『嵐の夜に抱きしめて』
二人はまだ駆け出しの新兵だった。
ネツァワルの首都に出てきたのはつい最近で、部隊に所属し、兵舎――
とは言っても建築物ではなく洞窟内の一角なのだが――の部屋を割り当て
られたのも数週間前だった。
この洞窟ばかりのベインワットで、どこに何があるのかもまだ把握
しきれず、移動にも慣れていない状態で、魔物狩りから帰還した二人は
自分たちの部屋に戻る道を見失い、関係のない通路に出てしまったり、
目も眩むような崖になったテラスに出てしまったり、真っ暗な行き止まりに
突き当たってしまったりして、はっきり言って迷子になっていた。
「なぁ……これ戻れなかったらどうすりゃいいんだ?」
黒い鎖帷子に銀と赤、白の装甲が取り付けられた、いかにも新入りですと
言う姿の若い戦士が不安げに呟く。
その鎧は国のオフィシャルショップで少しずつ販売されるタイプのもので、
若者本人ではなく彼の兄達が購入し、使わなくなった装備をお下がりとして
弟に与えたものだった。セットに頭部装備がないため、胴色の環状のものを
別途購入して装備している。
適当に切っているだけの不ぞろいな黒髪に、少し切れ長の黒い瞳は
それなりに大人びて見えるのだが、末っ子だからというのも手伝ってか、
見た目の割りにまだ中身は幼いらしい。
「いざとなったら、クリスタルの力使って出ればいいとは思うんだけど」
あまりにも不安そうな声で言った親友に苦笑して、もう一人の青年が
優しく微笑んで言った。
こちらは淡い青と銀の、袖なし短パンの上下に申し訳程度の装甲が
ついた、やはり新入り向けの装備を身につけた短剣使いだった。
顎の辺りまで伸ばした赤い髪は額の真ん中でしっかり分けて整えられ、
毛先もきれいに切りそろえられている。
少し大きめの誠実そうな瞳は、甘い果実酒に似た透き通るような赤で、
見る者を酔わせる魅力があった。
顔立ちは黒髪の戦士よりも幼いが、雰囲気はずっと落ち着いている。
「あ、その手があったか」
言われてやっと気づいたというように、黒髪の戦士が目を丸くする。
不安や焦りで落ち着きをなくし、冷静に考えられなかったのだろう。
「アドニスは昔から慌てん坊だよな」
赤毛の青年はくすくすと笑いながら、親友の頭をくしゃりと撫でる。
「な、なんだよ。おまえだって今まで不安そうな顔してたくせに」
俺レセダのそういうとこ嫌いだ、と、アドニスと呼ばれた戦士は
口を尖らせてそっぽを向いた。
「おまえに合わせてただけだもん」
レセダと呼ばれた赤毛の青年は、真似るように口を尖らせて言った。
「それに、なるべく歩いて覚えないと、結局帰れないしね」
そうなのだ。
いくらクリスタルの力で首都の転送先に戻ろうと、そこからの道を
覚えない限り、結局部屋に帰ることもできないし、今後買い物などにも
困ってしまう。首都そのものの構造に慣れる必要があった。
「まあな……そういや昔から二人でよく探検ごっことかしたなぁ」
アドニスは再び歩き始めながら、少し遠くを見るような目をした。
二人は幼馴染で、首都から程近い町で生まれ育った。
そこも半分ほどが崖を利用した洞窟でできていて、町のあちこちに
不思議な空間があったものだった。
「その頃から道に迷うとすぐびくびくしてたよね〜」
レセダはその頃の親友を思い出して、またニヤりと笑う。
「う、うっさい! 遅くなると親父と兄貴たちに怒られてたんだよっ」
迷うことの不安よりも、遅く帰った際のお仕置きが怖かった、とでも
言いたいのだろう。
しかしそれは、余計に親友を面白がらせてしまった。
「怒られるのが怖かったの? 今は誰にも怒られないのに不安そうじゃん」
「う……」
アドニスは何も言えなくなって、黙って足を速めた。
顔を赤らめて黙ったまま歩き続ける黒髪の青年と、それをおかしそうに
見つめながらついて歩く赤毛の青年。
しばらくそのまま、上下にも左右にも続く洞窟内を彷徨っていたが。
「誰にも会わないってのも不安だよな」
「うん……人いないね」
からかっていたレセダも、今度こそはさすがに不安になったようだ。
一般の市民が入ってこない軍人向けの区画ではあるのだが、それでも、
兵士の一人にも会わない。
「この辺ってまだ掘ってる最中だったりするのかな?」
レセダが思いついたように言う。
最近、兵士の数が増えていることもあってか、居住区を増やす計画があると
聞いたことがあった。
「あー、それじゃ逆に歩いて戻ったほうがいいかな」
そう言いつつも、そのまま前進していると。
目の前に、外へ出られそうな補強された穴を見つけた。
もう夜なのか、穴の向こうは薄暗いが、「灯りのない洞窟」よりは明るい。
二人は試しにそこから出てみた。
そこには、岸壁に寄り添うようにして通路が続いていた。
日はほぼ落ちていて、雲の隙間から時折覗く月明かりと、窓や入り口から
漏れる洞窟内の灯りが頼りだったが、外側を伝って、別の区画へ行けそうだ。
昔二人で町を探検していたときのような、好奇心のようなものが、
二人の心を躍らせた。
「な、ちょっと行ってみねぇ?」
「俺も今そう思ってた」
それまで不安そうだったアドニスの方から誘ってきたことで、レセダも
乗り気になって強く頷く。
◇◇◇
その通路は一応完成しているのか、二人で並んで歩ける程度の幅もあり、
足場としてきちんと頑丈に作られていた。
しばらく行くと、少し先に洞窟内への入り口があり、通路自体もそこで
終わっているようだった。
「あそこから入れば人のいる区画かなぁ」
もう少しで……というところで、急に風が吹き始め、大粒の雨が降る。
雲行きは元々怪しかったのだが、「月が隠れて明かりが心もとないな」
程度にしか思っていなかった二人は慌てた。
「ちょっ……あそこまで走るぞ」
濡れるのを嫌ってか、アドニスは先に入り口へ向かって走り出す。
レセダも風雨から目を庇うようにして走った。
入り口の先は、結局まだ無人の区画が続いているようだった。
誰も、いない。
「うーん、素直にクリスタル使って出る?」
レセダが冷静にそんなことを口にする。
「……」
なぜか、アドニスは答えなかった。
「アドニス?」
「……もう少し歩いてみねぇ?」
そういって指した先は、まさに居住区を作っている最中だったようで、
小さな部屋などがいくつも見えた。
今は作業をする者たちもおらず無人ではあるが、作業期間に休憩や仮眠に
使っているのか、家具などが運び込まれた部屋もあった。
「暖炉も使えそうだし、服とか乾かしてこうぜ」
今入ってきた入り口を見ると、雨はただの通り雨ではないようで、
激しい風で吹き付けられ、さらに雷の音が近づいているのがわかった。
「これ、今ヘタに転移しようとすると、嵐ん中に出るかも」
クリスタルを利用した転移は、細かい場所を指定して移動することが
できない。いくつかの指定された地点に、なかば強引に連れて行かれる
ような仕組みなのだ。
「確かに、あの橋の上とか出るとやだなぁ」
レセダは以前、雨の中に転移してずぶ濡れになったことがあった。
今は雨どころでなく、酷い風雨だ。
雨の音で、小さな声は聞こえなくなりそうなほどだった。
洞窟内を照らす小さな明かりを頼りに、使えそうな部屋を探す。
あまり入り口に近いと雨が吹き込んでくるため、少し奥に進む。
「っくしゅっ!」
「大丈夫か? 早めに火焚きたいな」
くしゃみをしたレセダを見て、アドニスは少し慌てたように足を速める。
「いやぁ大丈夫だよ。あ、でもこの部屋とか使えそ」
くしゃみの拍子に向いた方角に、薪をくべた跡のある暖炉と、使えそうな
薪が置かれた部屋を見つけた。
二人は早速、誰に言うでもなしに「お借りします」と言って暖炉に
火を入れた。
洞窟内で暮らすための技術はかなり進んでいて、煙を外に出す仕組みも、
二人にはわからなかったがきちんと作られている。
アドニスが関心して暖炉を眺めているうちに、レセダはさっさと装備を
外し始め、服も脱ぎだしていた。
「あっ、ちょっ……」
「どした? 服乾かすんだろ、おまえも早く脱いだほうがいいよ」
なぜか急にうろたえて背中を向けたアドニスに、レセダは笑いかける。
上着をすべて脱ぎ、靴なども放ってほぼ半裸になると、レセダは部屋を
物色して軽い綿の掛け布団を見つけ出して羽織った。
「お、暖かい」
そのまま暖炉の前に座り込む。炎がレセダの赤い髪と瞳を照らす。
アドニスはなんとなく、その横顔を眺めていた。
「何してんだよ、脱がないとおまえが風邪引くぞ?」
呆けたまま動かないアドニスに、レセダは不思議そうな視線を向けた。
「あ……うん」
視線が合うとまた、何か慌てたようにそれを逸らして、アドニスも
鎧を外し始めた。
が、鎧の下に着けている服を脱ぐ前に手が止まる。
「どしたの?」
他に見る物もないのでそちらに視線を向けていたレセダがそう訊ねると、
アドニスは顔を赤らめた。
「な、なんで見てんだよ。見んなよ」
「ちっこい頃からよく一緒に着替えてるじゃん。なに今更照れてんの?」
レセダは面白がって、羽織っていた布団を放ってアドニスの背に飛びついた。
「なっ……!?」
「脱げないなら手伝おっか?」
そう言って、ふざけ半分に服を脱がそうとレセダの手が肌に触れると、
アドニスはまるで雷撃を食らったときのように一瞬震え、硬直した。
「……アドニス?」
自分の鼓動と比べてはるかに速く大きく打ち鳴らされている心臓に気づき、
後ろから抱きしめているような格好のまま、レセダも止まってしまった。
「「ごめん」」
どちらからともなく、ほぼ同時にそう謝って体を離す。
「その、なんだ……何か、あったの?」
よくわからないが心配になったレセダは、どう声をかければいいか
迷いつつ、そう訊ねてみた。
「……俺、その、」
真っ赤になって俯いたまま、アドニスは言葉を濁す。
「俺、前からおまえのこと、が」
それだけで何を言おうとしているのか、レセダにもわかったが、
どう答えればよいものかわからず、また言葉を遮るのも悪い気がして、
黙って聞いていた。
「その、ずっとそういう意味で、……好き、だったんだ」
やっとのことで声を絞りだし、アドニスはちらりとレセダの顔を見る。
しかし恥ずかしいのか、後ろめたいのか、すぐに俯いてしまった。
「……いつから?」
ただただ驚いて、レセダは自分でも何を聞いているのかわからなかった。
そんな素振りは今までなかった、いや気づかなかっただけかもしれないが、
少なくともそんな雰囲気を感じたことは、今の今までなかったのだ。
「たぶん、兵舎で同じ部屋になってから」
それ以前から好きではあった、とアドニスは言う。
「俺、その。今こんなことまでぶっちゃけるのアレだけど……」
一度、決心するかのように瞳を閉じて深呼吸し、アドニスは続けた。
「その……兄貴たちに、そういう意味でかわいがられてたから、なんというか
抵抗がないっていうか、その、ええと」
好意のある相手であれば、性別やら何やら関係なく、そういうことをするのは
普通だと子どもの頃は思っていた、と途切れ途切れに言葉にする。
レセダは驚きのあまり、身じろぎすらできずにそれを聞いていた。
まさかあの家庭でそんなことが行われていたとは。
母親を早くに亡くして、男所帯でむさ苦しい印象がある家だった。
確かに末っ子のアドニスはとても可愛がられていたのを覚えている。
でも、まさかそういう意味でまで、愛されていたとは。
「それが普通じゃないって、思ったのはいつ?」
普通のことだと思ったままなら、今こんなに苦しそうに告白することも
ないだろうし、それ以前に、もっと前に行動を起こしていたのではないか。
そう思ってレセダはなんとなく疑問を口にしてしまった。
「はっきりとは覚えてないけど……兄貴が“他の人には絶対言うな”って
言ってたのと、本とか読んでても、なんか違う感じがして」
一般的に世の中に出回っている恋愛小説などは、大抵が男女のものだ。
それに、そう簡単に肌を触れ合わせるようなことにはならない。
いろいろな紆余曲折があって、困難を乗り越えたりして、結ばれる。
もちろんそうでない、いやらしさが売りの大人向けの本もあるが。
それでも、兄弟や、そもそも同性でというものはあまりない。
「だから、ごめん……やっぱり俺、変なんだよな」
先ほど脱がせようとしてレセダが触れてしまった、脇腹のあたりを押さえ、
アドニスは消え入るような声で呟いた。
風雨の音でかき消されそうな声だった。
「いや、驚きはしたけど、変では……ないと思う」
そういう恋愛を描いた本などもある。ただ、自分がその対象にされたと
いうことに驚きは隠せない。それに、告白されたからには、何か答えを
返さなければいけない。正直、それはどうすればいいのかわからなかった。
「レセダ、俺っ」
変ではないと言われて耐え切れなくなったのか、アドニスは親友に
抱きついた。
「えっ、ちょっと、待っ……」
いきなりぶつかられ、そのままよろめいて何かに足が躓く。
低めの寝台の縁だった。運良くなのか、悪くなのか、そのままベッドに
押し倒されるような形になってしまった。
床に倒れるよりはマシだが、この状況はその後の展開を促してしまっている。
「待って、落ち着いて、そんないきなりこんなこと」
普通の恋人だってしない。
やっとのことで親友の体を押し返しながら、レセダはそう言った。
「でも俺……おまえが、そういう意味で欲しい、我慢できない」
黒い瞳は泣きそうに潤んでいて、切羽詰ったような声をしている。
「おまえ、兄さんたちにされるのって、嫌じゃなかったのか?」
同じ男に何かされる、と考えただけで少し怖くなって、レセダは訊ねた。
アドニスは、そのとき怖くなかったのかと。
「よくわかってない頃からだったし、かわいがってくれてるとしか……」
自分にとってはむしろ嬉しかったことが、レセダを怖がらせているとわかり、
アドニスは押さえつける手を緩めた。
「……」
「俺、……俺は平気だし、挿れられるほうでもいいから」
「……え?」
黙ってしまったレセダを見つめたまま、真剣な顔で、アドニスはいきなり
直球ですごいことを言い出した。
その言葉の意味を理解して、今度はレセダが顔を赤らめる。
今まであまり気にもしていなかったのだが、アドニスの肌はレセダの
それより少し白く、滑らかな感じがする。
切れ長の黒い瞳は、潤んでいるせいか扇情的にさえ見える。
「どっちでもいいんだ、俺、とにかくおまえが欲しい」
必死に訴えてくる親友の、告白された過去を……実の兄に抱かれていた
という姿を想像して、思わず体が熱くなる。
かわいがりたくなる気持ちが、わかってしまう気がした。
「いや、でも、その、どうすればいいのかわかんないし」
自分の抱いてしまった劣情を振り切ろうとして首を振り、レセダは
慌てて起き上がろうとする。
しかしその勢いを利用して、アドニスはレセダの唇を奪った。
「……っ!」
「……」
「……ぅ、んっ」
逃れようとする自分の苦しげな息遣いと、逃すまいとするアドニスの
吸い付くような音だけがレセダの耳を刺激する。
外で荒れ狂っているはずの風雨の音はどこか遠くで鳴っているようにしか
思えなかった。
「おまえの望むほうで……俺がリードするから」
アドニスは唇を離し、耳元でそう囁く。
「どっちなら、いい?」
口づけの余韻と、肌を這う指に、脳が痺れていくようで、レセダは焦る。
何か答えなければと思うものの、正直どちらもどうすればいいのかわからない。
「されるのは怖いけど、その、するのってどうすれば……」
できれば、されるのはなんとなく避けたかった。
「女ともしたことないのか?」
「してたらおまえに言わないわけないじゃん」
ほとんど隠し事などしたことがなかった。少なくともレセダの側は。
「そっか……じゃあ俺が初めてなんだな」
アドニスが嬉しそうにその黒い瞳を細める。
「俺、されるほうは慣れてるから大丈夫」
そう言って、レセダの手を取ると、指を舐め始めた。
くすぐったいような、恥ずかしいような感覚に、思わず目を閉じる。
かなりの量の唾液を絡められたと思いきや、その手を体の下のほうへ
持っていかれ、何かに触れたところで恐る恐る瞼を上げた。
目の前にはアドニスの顔があった。
指が何か狭いところへと導かれて入り込んでいく感覚とともに、その
アドニスの顔が少し苦痛に歪む。
自分に跨るようにして乗っているアドニスの、下着も下げたその足の間に、
レセダの手はあった。
「こ、これどうすれば……」
自分の指が、締め付けられるような熱い場所に入り込んでいく。
レセダはどうすればいいのかわからず、少し指を動かしてしまうと、
びくりとアドニスの体が震えた。
「ごめっ」
「だ、大丈夫だから……も少し、奥の……多分ちょっと固いとこ……」
慌てるレセダに、眉を顰めながらもアドニスは微笑んで、その指を
もっと奥へと押し込もうとする。
指先が、他とは少し違う感触の部分に触れる。
「その辺……あと、すぐには入らないから、解すみたいに、動かして、くれ」
それだけ言うと、添えていた手を離し、レセダの胸や首筋に指を這わせる。
レセダは言われたあたりを中心に、そっと撫でるように指を動かしてみた。
「ぁ……っ、は、もっと、強くても、平気……」
アドニスの吐息混じりの声が、レセダの耳をくすぐる。
言われずとも緊張して、指に力がこもる。
「ぅ……あ、あぁ、レセダぁっ……」
息が上がり、色めき始めたアドニスの声に、レセダは体の芯が燃えるよう
な感覚を覚えた。動かす指が激しさを増してしまう。
「アドニス……どうしよう、俺……なんか……」
今自分の指が包まれているその場所に、これから自身が飲み込まれるのかと
うっかり想像して身を固くする。
「俺に、欲情、してくれてんだ……」
アドニスは指の動きに身もだえしながらも、笑みを浮かべてレセダに口づけ、
張り詰めたその部分に手を添えた。
「指、抜けよ……もういける」
「俺は、どうすれば?」
本能のまま突っ走ればいいなら、アドニスを押し倒してその後の行為に
及ぶことはできる、という確信はあった。
が、それで大丈夫なのかどうか、レセダには自信がなかった。
男女の絡みの本なら読んだことがあるのだが。
「俺が動くから、おまえはそのままでいいよ」
アドニスはそう言うと、添えていた手をその先端に移し、少し零れていた
滑りを周囲に広げる。
そのまま、レセダに跨るようにして腰を下げていき、先端の滑りに任せて
体内へと導きいれた。
「ぅあ……っ、アドニ、ス、っ」
きつく締め付けられる初めての感覚に、レセダは思わず呻く。
一人で処理することは普通にあったが、そんなものとは比べ物にならない
強烈なめまいのようなものに襲われた。
「まだ……動いてないぜ……?」
自分で感じているとわかって、アドニスは意地悪く囁いた。
無理に逆の立場を押し通さなくてよかった、と心のどこかで思っていた。
「もっと俺で感じて……」
困惑したような顔の親友を見つめたまま、アドニスは腰を揺らし始めた。
「あっ、ちょ……待って……やば、い」
「別に、イっちゃっても、い、ぜ……ぁあ……レセ、ダ、ぁ」
もう達しそうなら、と、アドニスは自身の快楽を求め、刺激が欲しい
その箇所に導くように、深さと角度を調整して擦りつける。
喘ぎ始めたアドニスの声と表情に余計に煽られて、レセダの体の熱が
腰のあたりに集中していく。
いつもふざけあっていただけの友人に、こんなにも欲情してしまう自分に
レセダは自分で驚き、恥ずかしくて仕方なかった。
「くそっ……おまえ、なんでそんな、色っぽいんだよ……っ」
卑怯だ、と言って、レセダは自身も突き上げるように腰を浮かせてしまう。
「知るか、馬鹿っ……きゅ、に、動くなっ……ぁ」
「も、止めらんないからな……!」
今までの関係ではいられない、恐らく自分から求めるようになってしまう、
レセダはそんな予感がしていた。
「止める、ひつよ、ねぇし……」
望むところだ、といった挑戦的な顔でアドニスはレセダを見下ろした。
惚れた弱みはアドニスにあるはずなのに、そして「している」のはレセダの
側のはずなのに、どう見てもアドニスの方が立場が上だった。
「今度は、俺が、自力で、ヤってやるからなっ」
もう限界だという顔で息を切らしながら、レセダは強がって見せた。
「いつでもどーぞ……レセダ、好きだぜ……!」
「俺もだよ……なんか悔しいけど……っ」
そのまま無言になってしがみつき合い、レセダはアドニスの体内に、
アドニスはレセダの腹部に、熱い想いを解き放った。
◇◇◇
二人の間の嵐が落ち着いたところで、外の音が戻ってきた。
「まだ雨凄そうだな」
ベッドに並んで寝転んだまま、アドニスが呟いた。
「このまま朝までここで寝ちゃおうか……」
レセダが大きなあくびをする。
「なにしたかバレないように、いろいろ片付けてから寝ないと」
「なんだ、人のこと襲っておいて周囲にはバレたくないの?」
面倒そうに起き上がったアドニスを引き止めるように、レセダが腕を掴む。
「襲ったって、ヤったのはそっちだぞ」
「どっちが挿れたかは問題じゃない、襲ったのはそっちだ」
喧嘩のような口調ではあったが、どちらも顔が笑っている。
「おまえそういう直接的な表現やめろよ」
「する前におまえが自分でも言ってたじゃないか」
どちらからともなく、ぷっ、と吹き出して笑い出す。
「でもこれ、ほんと朝作業しに人が来たら、驚くどころの話じゃないぞ」
アドニスは再び片付け始めながら言った。
「そうだね……」
「まあ、公認のカップルとかいいかもしれないけどな」
「無理、それ絶対無理!!!!」
先ほどは片付けを邪魔したレセダの方が、今度は真剣になって片付けだした。
「一緒に寝てるだけでもかなり怪しまれそうな気がするんだけど、どうする?」
結局適当に脱ぎ捨ててしまった服などを暖炉前に並べて乾かしながら、
アドニスが訊ねる。
「……一緒には寝たい……」
ぼそり、と小さく呟いたそのレセダの声は、風雨の音にかき消されて
アドニスには届かなかった。
「ん?」
「いや、俺ソファでいいよ」
「他の部屋にもベッドはあるぜ?」
どうせ別々に寝るならちゃんとベッドで寝ろよ、とアドニスは提案するが、
「部屋くらい一緒にいたいんだよ」
レセダは顔を赤らめてそう言った。
「あれ、なんか立場逆転? あれ?」
アドニスは嬉しいような恥ずかしいような気分で思わず声が上ずった。
「ばーか。喜びすぎだよ」
レセダは吐き捨てるようにそう言うと、掛け布団を一枚持ってさっさと
ソファに横になってしまった。
そんな仕草を見て。
「……やっぱり俺、おまえのこと」
大好きだ――!
無駄に大声でアドニスは叫んだ。
工事中ということで道は入り組んではいたが、同じ居住区の増設。
実はすぐ近くに、兵士たちの住む区画があった。
外が嵐だとはいえ、洞窟内に響いたその声は、一部の兵士たちの
耳に届き、安眠を妨害してしまうのだった。
