2008年04月10日
FEZキャラ過去話 その1
とりあえず一番古い話にあたるものから……
ということで、ゲブの兄妹の過去話から。
自分の脳内では、RoD(リングオブザドミニオン)のβ1というのは
ゲブとカセしか国がなかったので、カセの独立戦争みたいなものだった、
ということにしてあります。
実際、初期はゲブ優勢カセ劣勢だったものが、最後には逆転し、
カセ側の大勝利みたいな形で終わってしまったというのもありまして。
本当の設定がどうなのかはよくわかりませんが、
ちょうどその頃ライル様が皇帝の座を継いだのかなぁみたいな。
この過去話はそれ(RoDβ1)よりもさらにちょっと前、という設定です。
カセの兄Calvinと、ゲブに残った妹Froschに関しては、
フレである栢沼様のおうち(の本拠地の方)でもお世話になっておりますので、合わせてご覧いただけると嬉しいなぁと思います。
自分が書かせていただいたものと、栢沼様の作品に登場させていただいてるものと、両方ありまする。
というかふろ子については自分が書くより栢沼様の描写のほうが萌えでですね……!(*゚∀゚)=3 (←興奮しすぎ)
あ、SS自体は続きから始まります。
※今後もフレのキャラを何人か登場させたりしますが、名前はすべて
英数字や漢字ひらがななども「カタカナ」に変えています。
そのため、実際のゲーム内の方とは別人の可能性があります。
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ということで、ゲブの兄妹の過去話から。
自分の脳内では、RoD(リングオブザドミニオン)のβ1というのは
ゲブとカセしか国がなかったので、カセの独立戦争みたいなものだった、
ということにしてあります。
実際、初期はゲブ優勢カセ劣勢だったものが、最後には逆転し、
カセ側の大勝利みたいな形で終わってしまったというのもありまして。
本当の設定がどうなのかはよくわかりませんが、
ちょうどその頃ライル様が皇帝の座を継いだのかなぁみたいな。
この過去話はそれ(RoDβ1)よりもさらにちょっと前、という設定です。
カセの兄Calvinと、ゲブに残った妹Froschに関しては、
フレである栢沼様のおうち(の本拠地の方)でもお世話になっておりますので、合わせてご覧いただけると嬉しいなぁと思います。
自分が書かせていただいたものと、栢沼様の作品に登場させていただいてるものと、両方ありまする。
というかふろ子については自分が書くより栢沼様の描写のほうが萌えでですね……!(*゚∀゚)=3 (←興奮しすぎ)
あ、SS自体は続きから始まります。
※今後もフレのキャラを何人か登場させたりしますが、名前はすべて
英数字や漢字ひらがななども「カタカナ」に変えています。
そのため、実際のゲーム内の方とは別人の可能性があります。
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『約束』
冷たい石造りの小さな家の、わずかに暖かさをくれる暖炉の横で、
その少年と少女は寄り添って座っていた。
「お兄ちゃんは、戦争へ行くの?」
まだ幼い少女は、眠そうな顔で少年を見上げて訊ねる。
少年のほうは成人の少し手前だろうか。
大人とも子供ともつかない体格で、小さな妹を包み込むようにして
一緒に毛布を羽織り、頷いた。
「うん……」
少年の表情にはまだ少しだけ迷いがあった。
二人にはもう両親はいない。母親は少女を生んですぐに病で亡くなり、
ある貴族の館で下働きをしていた父親は、
その主人が何者かに襲われた際、ともに命を落としてしまっていた。
少年が戦争に出るようになれば、
幼い妹は一人で家にいることになってしまう。
しかし迷いはそのことから来ているのではなかった。
少年は、生まれたこの国を出て、反乱軍に参加しようとしていたのだ。
家どころか、この国に、一人置いていくことになる。
皇帝グラーハの死後、利権をむさぼる貴族達に不満を抱く者が増え、
あちこちの小国で反乱が起きていた。
少年たちの住む町にも貧しい者が多く、不満が渦巻いている。
母親の病を治せなかったのも、貧富の差を作り出した貴族のせい。
父親が命を落としたのも、貴族なんかに仕えていたせい。
そうやって何かに怒りをぶつけていなければ、生きていられなかった。
「一緒に行く」
少年の半分の歳にも満たない少女は、戦争が何なのかも
よくわからないまま、そう言って兄の腕にしがみついた。
「フロゥはまだ小さいから、無理だ」
しがみつかれたままの腕で、少年は妹を抱き寄せる。
「そうだ……おまえは母さんの親戚の、おじさんのとこに行くんだ。
あの人は父さんの葬式にも来てくれたから、きっと助けてくれる」
少年がおじさんと呼ぶ人物は、彼の住む近隣では
変わり者扱いをされている魔道士だった。
雷撃の魔法を操り、若いながらにすでにかなりの功績を上げている。
しかし、勉学や修行のために人里離れた地に居を構える彼は、
無学な人々の目には「奇妙な存在」としてしか映っていなかった。
「みんな、あの人の優しさとすごさをわかってないだけだ」
本当は、一緒に反乱軍に加わって欲しいと思っていた。
少年自身は魔道士ではなく、剣と盾を扱う護衛タイプの
戦士を目指していたが、彼は憧れの存在だった。
しかしそれと同時に、生粋の帝国軍人である彼が、裏切り行為など
するわけがないということも、痛いほどにわかっていた。
「明日あの人のところへ行こう。今日はもうおやすみ」
返事はなかった。
小さな妹は、腕にしがみついたまますでに寝入っていた。
翌朝。
少年と同じ年頃の若者が、勢いよく扉を開けて部屋に入ってきた。
「……カルヴァン、おまえ本気なのか!?」
戦士としての身支度を整えている少年を見て、若者はそう叫んだ。
「当たり前だ。冗談で言える話じゃない」
「フロゥはどうすんだよ。せめて十歳くらいになるまで居てやれよ」
若者は、兄妹が両親を失った時から親しくしている友人だった。
だからこそ反乱軍のことも相談されていたし、
妹を置いていくつもりであることもすでに知らされていた。
「ルドゥーおじさんにあずけることにした」
「あずけるったって、あの人も軍人だろ? 戦争にだって行くだろうし、
こんな小さな女の子の面倒、見れんのかよ!」
「護身の術を習わせたいってのもあるんだ」
掴みかかった友の腕に自分の手を置いて、少年は苦しそうに言った。
「すまない、ブラッド……君とも、敵になるかもしれないけど」
「俺だって汚ぇ貴族たちは嫌いだ。でも国出てどうにかなんのかよ。
中から変えようって思わないのか!?」
ブラッドと呼ばれた若者は、友人が選んだ道を理解できなかった。
受け入れたくなかった。
「どうしても、あの貴族達のために戦いたくないんだ。
自分達が食べるのも大変なのに、
あいつらのために戦いながら国を変えるなんて、俺には無理だよ」
これはある意味弱さだ。
少年は自分でわかっていた。でもどうしようもなかった。
「気持ちは、変わらない、か……」
とうとう諦めたのか、若者は友人を掴んでいた手を弛めた。
「すまない」
「そんな弱気な顔すんな。戦場で会ったら敵だぞ」
若者は苦笑しつつも、挑戦的な声で告げる。
「戦士同士じゃ直接ぶつかることもあるだろ。容赦しねぇぞ」
拳を軽く握り締めて、少年の胸を叩いた。
憎しみでも皮肉でもない、励ますような笑顔を浮かべて。
「フロゥのことは心配すんな。俺も見ててやるから」
遅れて起きてきた妹の身支度を手伝う姿を見ながら、
若者はそう声をかける。
「そのことなんだけど……一緒にあの人の家まで来てくれないか。
話があるんだ」
少年は何か決意をしたような顔で友人を見上げた。
よくわからないまま、その真剣さに気圧されて若者は頷く。
三人は、もう二度と戻らないかもしれないその家を後にした。
「変わり者の魔道士の家」
道を尋ねるたびに人々はそう言って、近場までの案内を拒んだ。
この世界に存在する限り、どんな人間でも
クリスタルの加護を得て魔法などを扱える。
だが、その方法を学ばない限り、活用はできない。
戦争や、魔物狩りなどに関わらない一般の人々は、
まったくそれらの力を使わずに一生を終えることが多い。
そのため、あまりにも強大な力を持つ魔道士などを
恐れる傾向があるのだ。
「ある意味、強さが認められてるってことか」
若者はため息をついた。
現状に不満を抱きながらも、学ぶことすらせずに生き、
その上国を守る兵士を忌避する。
そんな人間が多いから、あんな貴族達がのさばるのだ。
「あ、あの家だ」
畑すら見えなくなった頃、草むらの奥に温かみのある
木造の家が見えた。魔道士が自分で建てたのだろうか。
彼の隠された人格が、家の雰囲気から伝わってくる。
予想以上に厚みのある戸を叩くと、入るように促す声が聞こえた。
重い扉を開けて中に入るが、近くに姿は見えない。
奥で何か作業をしているらしい。
「ルドゥーおじさん、お久しぶりです」
書物がぎっしり詰まった本棚の林の奥に呼びかける。
ついてきた友人と妹は、初めて見る本の山に目を丸くしていた。
少しして、その書物の合間から魔道士が姿を現した。
「おお、カルヴァンか……やっぱり、行くのか」
軽いものとはいえ、鎧をつけ帯剣している少年の姿を見て、
魔道士は少し悲しそうに眉をひそめた。
「はい。それで、今日は妹のことでお願いがあって来ました」
魔道士に導かれて、落ち着いて座れる部屋へと移る。
「男として育てろ、と?」
魔道士は考え込むように顎の髭に触れながらつぶやいた。
「護身のためとはいえ魔法を学べば、いずれ戦場に
駆り出されてしまうと思うんです。
でも、俺が守ってやることもできないし、
おじさんとブラッドに負担をかけたくもない」
少しでも、「危険」なことから遠ざけておきたかった。
「本気かよ……後で相当困るんじゃねーの?」
友人は心配そうに少女の方を見やる。
言われた本人はまだよく状況が飲み込めていないようだ。
「私はどちらでも構わないが……元々ここには滅多に人は来ないしな」
魔道士の瞳にも、僅かに少女を気遣う揺らぎがあった。
少年は二人に頭を下げ、改めて依頼すると、
妹の前にしゃがみこんで言った。
「フロゥ、おまえは今日から、兄ちゃんと同じ男として生きるんだ」
「お兄ちゃんと同じ?」
同じ、と言われて素直に嬉しそうな顔をする。
よほど兄のことが好きなのだろう。
他に家族がいないのだから当たり前とも言えるが。
「うん。そうだな、名前もこのままじゃ何だから……」
少年はそこで、昔妹に読んで聞かせた絵本を思い出した。
何匹かのカエルたちが主人公の童話だ。
「フロッシュ、っていうのはどうだ。おまえも好きな本に出てただろ」
主人公ではなかったが、名前が似ているということで
少女のお気に入りのカエルだった。
「フロッシュっていう名前の男の子になればいいんだね!」
わかっているのかいないのか、少女は満面の笑顔で頷いた。
そんな妹の手をとって、少年は続ける。
「それから、ルドゥーおじさんのことは師匠って呼ぶんだ。
魔法を習って、自分を守れ。
あと、戦争に行くことになっても、前線には出ちゃいけない」
「どうして?」
少女は軽く首をかしげる。
戦争というものを理解できていないため、前線という言葉も
わかってはいないだろう。
それでも、「何かをしてはいけない」といわれる時には
理由があるはずだと、幼いながらの思考からそう訊ねていた。
「おまえに戦いそのものは向かない。痛いのは嫌いだろう?」
「うん」
「戦争には、戦い以外にも必要なことはたくさんあるんだ」
理解できていないであろう妹に話しながら、少年は、魔道士と友人が
後々に彼女に教えてやってくれるだろうことを期待していた。
「大きくなって魔法を覚えたら、戦争のことも勉強するんだぞ」
「うん、わかった」
兄の手を握り返して、少女は元気に答えた。
しばらく今後のことを話し合った後、少年はいよいよ
旅立つことになった。
「体、気ぃつけろよ」
友人が気遣う。
「戦場では無理をするんじゃないぞ。妹が待ってるのだからな」
魔道士も念を押すように言う。
二人に頷いて、少年は一歩踏み出した。
「お兄ちゃん、いつ帰ってくるの?」
ふと、少女が声をあげる。
振り向いた少年は、優しく微笑みかけて、言った。
「フロゥが……フロッシュが約束を守っていい子にしてたら、
すぐ帰るよ」
「わかった、約束する! 待ってるね!」
少女は小さな体を精一杯伸ばして、兄に手を振った。
この約束が、妹を苦悩に縛りつけてしまうことになるとは、
このときの少年には、まだわからなかった。
冷たい石造りの小さな家の、わずかに暖かさをくれる暖炉の横で、
その少年と少女は寄り添って座っていた。
「お兄ちゃんは、戦争へ行くの?」
まだ幼い少女は、眠そうな顔で少年を見上げて訊ねる。
少年のほうは成人の少し手前だろうか。
大人とも子供ともつかない体格で、小さな妹を包み込むようにして
一緒に毛布を羽織り、頷いた。
「うん……」
少年の表情にはまだ少しだけ迷いがあった。
二人にはもう両親はいない。母親は少女を生んですぐに病で亡くなり、
ある貴族の館で下働きをしていた父親は、
その主人が何者かに襲われた際、ともに命を落としてしまっていた。
少年が戦争に出るようになれば、
幼い妹は一人で家にいることになってしまう。
しかし迷いはそのことから来ているのではなかった。
少年は、生まれたこの国を出て、反乱軍に参加しようとしていたのだ。
家どころか、この国に、一人置いていくことになる。
皇帝グラーハの死後、利権をむさぼる貴族達に不満を抱く者が増え、
あちこちの小国で反乱が起きていた。
少年たちの住む町にも貧しい者が多く、不満が渦巻いている。
母親の病を治せなかったのも、貧富の差を作り出した貴族のせい。
父親が命を落としたのも、貴族なんかに仕えていたせい。
そうやって何かに怒りをぶつけていなければ、生きていられなかった。
「一緒に行く」
少年の半分の歳にも満たない少女は、戦争が何なのかも
よくわからないまま、そう言って兄の腕にしがみついた。
「フロゥはまだ小さいから、無理だ」
しがみつかれたままの腕で、少年は妹を抱き寄せる。
「そうだ……おまえは母さんの親戚の、おじさんのとこに行くんだ。
あの人は父さんの葬式にも来てくれたから、きっと助けてくれる」
少年がおじさんと呼ぶ人物は、彼の住む近隣では
変わり者扱いをされている魔道士だった。
雷撃の魔法を操り、若いながらにすでにかなりの功績を上げている。
しかし、勉学や修行のために人里離れた地に居を構える彼は、
無学な人々の目には「奇妙な存在」としてしか映っていなかった。
「みんな、あの人の優しさとすごさをわかってないだけだ」
本当は、一緒に反乱軍に加わって欲しいと思っていた。
少年自身は魔道士ではなく、剣と盾を扱う護衛タイプの
戦士を目指していたが、彼は憧れの存在だった。
しかしそれと同時に、生粋の帝国軍人である彼が、裏切り行為など
するわけがないということも、痛いほどにわかっていた。
「明日あの人のところへ行こう。今日はもうおやすみ」
返事はなかった。
小さな妹は、腕にしがみついたまますでに寝入っていた。
翌朝。
少年と同じ年頃の若者が、勢いよく扉を開けて部屋に入ってきた。
「……カルヴァン、おまえ本気なのか!?」
戦士としての身支度を整えている少年を見て、若者はそう叫んだ。
「当たり前だ。冗談で言える話じゃない」
「フロゥはどうすんだよ。せめて十歳くらいになるまで居てやれよ」
若者は、兄妹が両親を失った時から親しくしている友人だった。
だからこそ反乱軍のことも相談されていたし、
妹を置いていくつもりであることもすでに知らされていた。
「ルドゥーおじさんにあずけることにした」
「あずけるったって、あの人も軍人だろ? 戦争にだって行くだろうし、
こんな小さな女の子の面倒、見れんのかよ!」
「護身の術を習わせたいってのもあるんだ」
掴みかかった友の腕に自分の手を置いて、少年は苦しそうに言った。
「すまない、ブラッド……君とも、敵になるかもしれないけど」
「俺だって汚ぇ貴族たちは嫌いだ。でも国出てどうにかなんのかよ。
中から変えようって思わないのか!?」
ブラッドと呼ばれた若者は、友人が選んだ道を理解できなかった。
受け入れたくなかった。
「どうしても、あの貴族達のために戦いたくないんだ。
自分達が食べるのも大変なのに、
あいつらのために戦いながら国を変えるなんて、俺には無理だよ」
これはある意味弱さだ。
少年は自分でわかっていた。でもどうしようもなかった。
「気持ちは、変わらない、か……」
とうとう諦めたのか、若者は友人を掴んでいた手を弛めた。
「すまない」
「そんな弱気な顔すんな。戦場で会ったら敵だぞ」
若者は苦笑しつつも、挑戦的な声で告げる。
「戦士同士じゃ直接ぶつかることもあるだろ。容赦しねぇぞ」
拳を軽く握り締めて、少年の胸を叩いた。
憎しみでも皮肉でもない、励ますような笑顔を浮かべて。
「フロゥのことは心配すんな。俺も見ててやるから」
遅れて起きてきた妹の身支度を手伝う姿を見ながら、
若者はそう声をかける。
「そのことなんだけど……一緒にあの人の家まで来てくれないか。
話があるんだ」
少年は何か決意をしたような顔で友人を見上げた。
よくわからないまま、その真剣さに気圧されて若者は頷く。
三人は、もう二度と戻らないかもしれないその家を後にした。
「変わり者の魔道士の家」
道を尋ねるたびに人々はそう言って、近場までの案内を拒んだ。
この世界に存在する限り、どんな人間でも
クリスタルの加護を得て魔法などを扱える。
だが、その方法を学ばない限り、活用はできない。
戦争や、魔物狩りなどに関わらない一般の人々は、
まったくそれらの力を使わずに一生を終えることが多い。
そのため、あまりにも強大な力を持つ魔道士などを
恐れる傾向があるのだ。
「ある意味、強さが認められてるってことか」
若者はため息をついた。
現状に不満を抱きながらも、学ぶことすらせずに生き、
その上国を守る兵士を忌避する。
そんな人間が多いから、あんな貴族達がのさばるのだ。
「あ、あの家だ」
畑すら見えなくなった頃、草むらの奥に温かみのある
木造の家が見えた。魔道士が自分で建てたのだろうか。
彼の隠された人格が、家の雰囲気から伝わってくる。
予想以上に厚みのある戸を叩くと、入るように促す声が聞こえた。
重い扉を開けて中に入るが、近くに姿は見えない。
奥で何か作業をしているらしい。
「ルドゥーおじさん、お久しぶりです」
書物がぎっしり詰まった本棚の林の奥に呼びかける。
ついてきた友人と妹は、初めて見る本の山に目を丸くしていた。
少しして、その書物の合間から魔道士が姿を現した。
「おお、カルヴァンか……やっぱり、行くのか」
軽いものとはいえ、鎧をつけ帯剣している少年の姿を見て、
魔道士は少し悲しそうに眉をひそめた。
「はい。それで、今日は妹のことでお願いがあって来ました」
魔道士に導かれて、落ち着いて座れる部屋へと移る。
「男として育てろ、と?」
魔道士は考え込むように顎の髭に触れながらつぶやいた。
「護身のためとはいえ魔法を学べば、いずれ戦場に
駆り出されてしまうと思うんです。
でも、俺が守ってやることもできないし、
おじさんとブラッドに負担をかけたくもない」
少しでも、「危険」なことから遠ざけておきたかった。
「本気かよ……後で相当困るんじゃねーの?」
友人は心配そうに少女の方を見やる。
言われた本人はまだよく状況が飲み込めていないようだ。
「私はどちらでも構わないが……元々ここには滅多に人は来ないしな」
魔道士の瞳にも、僅かに少女を気遣う揺らぎがあった。
少年は二人に頭を下げ、改めて依頼すると、
妹の前にしゃがみこんで言った。
「フロゥ、おまえは今日から、兄ちゃんと同じ男として生きるんだ」
「お兄ちゃんと同じ?」
同じ、と言われて素直に嬉しそうな顔をする。
よほど兄のことが好きなのだろう。
他に家族がいないのだから当たり前とも言えるが。
「うん。そうだな、名前もこのままじゃ何だから……」
少年はそこで、昔妹に読んで聞かせた絵本を思い出した。
何匹かのカエルたちが主人公の童話だ。
「フロッシュ、っていうのはどうだ。おまえも好きな本に出てただろ」
主人公ではなかったが、名前が似ているということで
少女のお気に入りのカエルだった。
「フロッシュっていう名前の男の子になればいいんだね!」
わかっているのかいないのか、少女は満面の笑顔で頷いた。
そんな妹の手をとって、少年は続ける。
「それから、ルドゥーおじさんのことは師匠って呼ぶんだ。
魔法を習って、自分を守れ。
あと、戦争に行くことになっても、前線には出ちゃいけない」
「どうして?」
少女は軽く首をかしげる。
戦争というものを理解できていないため、前線という言葉も
わかってはいないだろう。
それでも、「何かをしてはいけない」といわれる時には
理由があるはずだと、幼いながらの思考からそう訊ねていた。
「おまえに戦いそのものは向かない。痛いのは嫌いだろう?」
「うん」
「戦争には、戦い以外にも必要なことはたくさんあるんだ」
理解できていないであろう妹に話しながら、少年は、魔道士と友人が
後々に彼女に教えてやってくれるだろうことを期待していた。
「大きくなって魔法を覚えたら、戦争のことも勉強するんだぞ」
「うん、わかった」
兄の手を握り返して、少女は元気に答えた。
しばらく今後のことを話し合った後、少年はいよいよ
旅立つことになった。
「体、気ぃつけろよ」
友人が気遣う。
「戦場では無理をするんじゃないぞ。妹が待ってるのだからな」
魔道士も念を押すように言う。
二人に頷いて、少年は一歩踏み出した。
「お兄ちゃん、いつ帰ってくるの?」
ふと、少女が声をあげる。
振り向いた少年は、優しく微笑みかけて、言った。
「フロゥが……フロッシュが約束を守っていい子にしてたら、
すぐ帰るよ」
「わかった、約束する! 待ってるね!」
少女は小さな体を精一杯伸ばして、兄に手を振った。
この約束が、妹を苦悩に縛りつけてしまうことになるとは、
このときの少年には、まだわからなかった。

